ダメだとだと思いつつも、ある人と不倫関係になったところ、その相手の配偶者から慰謝料請求の通知が内容証明で届いた。
顔から血の気が引き、頭のなかが真っ白に。それ以降、仕事や家事はまったく手がつかず、何をどうすればいいのか、誰に相談すべきかもわからない…
不倫の慰謝料請求の内容証明を受け取った方の多くは、自責の念に駆られ、強い不安や恐怖を抱えます。しかし対応を間違えれば、裁判や予想だにしない深刻な事態に発展してしまうことに…。
ここでは不倫の慰謝料請求された方が、無事に問題解決させるためには、どのように対応すべきかを解説。主には次の内容を取り上げています。
- 慰謝料の支払いに応じる必要があるか否か
- 不倫の慰謝料の相場
- 請求者のやりとりの仕方やポイント
本記事を読めば、無事かつ早期に問題解決ができる可能性が高まります。
Contents
慰謝料請求者との円満解決を目指す
不倫慰謝料を請求されたあなたは、当然ながら請求者との円満な解決を望んでいるでしょう。円満解決とは、早期の問題解決の実現に他なりません。
反対に、もっとも避けたいのは裁判などに発展してしまう事態です。裁判に発展すれば、高額な訴訟費用が掛かります。
何よりもマイナスなのは、問題解決の長期化は免れないため、心の平穏がなかなか取り戻せず、精神面の負担が大きいことです。
とはいっても、裁判になる事態を回避しようとして、請求者に言われるがままの慰謝料額を払うこととは違います。
よって、自身のケースにおける支払う慰謝料の金額が妥当である、ということも円満解決の要件に含まれます。
以降、円満解決させるための方法をはじめ、不倫相手の配偶者からの慰謝料請求に関するポイントなどをお伝えします。
内容証明で不倫慰謝料を請求する意図
内容証明は一種の手紙ですが、通常の手紙とはやはり違います。一般書留なので郵便局員から直接渡され、受領印かサインが求められる郵便物となります。
不倫の慰謝料請求における書面には、次のような記述があるのが一般的です。
「本書到達時より〇週間以内に、不貞行為の慰謝料として※※※万円を支払うこと」
「支払いを拒否する場合は〇〇地方裁判所に慰謝料請求訴訟を申し立てます」
文末には次のようなスタンプが押されています。
「この郵便物は令和※※年※※月※※日第※※※※号書留内容証明郵便物として差し出されたことを証明します。郵便事業株式会社」
加えて受付郵便局と認証司の印が押されています。
弁護士などを通じて請求している場合は、弁護士などの職印なども押されており、特別すごみを感じるでしょう。
焦って対応をしないこと
実際に不倫慰謝料の内容証明が届いた方の多くは、今まで経験したことのない心理的な圧迫を感じます。しかし、お伝えした通り内容証明は手紙の一種です。
時効の延長や契約の解除の場面であれば、内容証明の到着により、法的な意味をもつ場合はあります。
相手からの不倫の慰謝料請求においては、何らかの法的効力は生じません。よって相手の請求に応じる、何らの回答をする、といった義務はないのです。
焦って相手の要求に対応すると、必要のない、または必要以上のお金を失う恐れがあります。
請求された側とすれば、この問題を一刻も早く解決したいと思うと同時に、支払う慰謝料を可能な限り下げたいのが本音でしょう。であれば事実関係や、書面に記載された内容についての検討から始めることです。
請求に応じさせるための常套手段
相手方は自分の請求を応じさせるため、文面に次のような内容をよく入れています。
「訴訟提起した際は、弁護士費用その他訴訟費用も付加して請求します」
「何らかの回答も頂けない場合は私の言い分を認めたとみなします」
このような文面を見ればより一層焦るかもしれません。しかし法的根拠及び効力がないことがほとんどなので、深刻に捉える必要はありません。
不倫の慰謝料請求に応じる必要があるかチェック
不倫相手の配偶者からの慰謝料請求に義務があるのは、次の4つを満たす場合です。
箇条書きの内容に1つでも該当しなければ、慰謝料を支払う必要はありません。個別に解説します。
不貞行為(性交渉)が実際にあった
実際に不貞行為、つまり性交渉があったか否かを確認しましょう。
不倫相手との間に不貞行為がなければ、慰謝料の請求は原則的に認められません。よって慰謝料を支払う必要はありません。
とはいえ、請求者もこれといった裏付けもなしに、慰謝料を求めるのは基本的にないでしょう。
性交渉がないのが本当であろうとも、どうして不貞関係が疑われたのか、この点のいきさつを確かめておいた方が適切でしょう。
※ 不貞行為の詳細は「どこから不倫なのかを法律的な観点で解説【不貞行為の定義】」で取り上げています。
不倫相手が既婚者だと知っていた
不倫相手が既婚者だと知っていながら、不貞関係をもったか否かを確認しましょう。既婚者だと知らなければ慰謝料を払う必要はありません。
例えば、次のような場合は過失があるといえます。
- 1人暮らしなのに家に絶対に行かしてくれない
- 土日や祭日は常に会ってくれない
- 夜は電話をとらない、または拒否される
不倫相手に箇条書きのようなことがあれば、既婚者なのでは? と容易に注意が向くはず。それを見落として、ずっと交際していることに過失がありといえます。
不倫相手の夫婦関係が破たんしていない
不貞関係の開始時点で、不倫相手の婚姻関係は破たん状態なのか否かを確認しましょう。婚姻関係が破たん状態ではないのなら、慰謝料の支払いを免れません。
もし不貞関係の開始時点で、既に離婚を前提に別居中ならば、婚姻関係が破たん以降の性交渉です。よって不倫相手の配偶者は、慰謝料請求の権利を有しません。
婚姻関係が破たん状態とは、客観的に見ても婚姻生活の破たんが明らかで、修復の可能性がないありようです。ただ単に夫婦仲が良くないとか家庭内別居くらいでは、婚姻関係が破たん状態ではありません。
自由な意思で性交渉をおこなった
自由な意思で性交渉をおこなったか否かを確認しましょう。
「自由な意思に基づいて」というのは、自分から率先して性交渉をおこなった場合を意味するのはもちろん。
こちらから誘わなくても、相手から誘われて性交渉をおこなった場合も含まれます。
相手から積極的なアプローチがあった云々は関係ありません。その誘いを拒むことも当然できたのですから「自由意思」があるといえます。
自由意思で性交渉をおこなったからには、慰謝料の支払いの責任は免れません。
なお無理矢理に性交渉をされた場合などは、自由意志に該当しないため、相手側の配偶者は慰謝料請求の権利を有しません。
すべて該当するなら慰謝料の支払いを免れない
お伝えした4つの内容にすべて該当するなら、慰謝料請求に応じるほかありません。あとは相手からの請求額に了承ができるか否かだけの問題となります
反対に、いずれか1つにでも該当しないなら、慰謝料の支払いに応じる必要はありません。請求者に支払い義務がないことを伝える流れとなりますが、なかなか理解されにくい傾向が強いです。
理解されないのであれば、あとは無視するのも1つの対応ですが、予想だにしないトラブルになる恐れも。よって請求者に納得してもらうのが望ましいです。
自身で請求者に理解を求めたが、相手が納得しない場合は、弁護士などの専門家に対応を依頼しましょう。相手は自身に請求権がないと理解するため、嫌々ながらも了承します。
不倫の慰謝料額は一概には決められない
慰謝料の支払いを免れないことを確認すれば、次はどれほどの金額を払う必要があるのかを確認しましょう。関連する点でもっとも気になるのは、慰謝料の相場ではないでしょうか。
実際のところ相場はありそうでないようなもの。
裁判所が慰謝料を算出する際には、離婚するか否かや婚姻期間、資力など、その事案における様々な要因を鑑みて決めるからです。よって一概に「不貞行為の慰謝料は〇〇〇万円」とはならないのです。
過去の判例をみれば、不貞行為の慰謝料は低額なら10万円以下、高額なら500万円以上認められた事案があります。
※ 不倫慰謝料の相場に関する詳細は「不倫慰謝料とは|目安はどれくらい? 【離婚しない場合も含め解説】」で取り上げています。
不倫の慰謝料額に影響を及ぼす要素
不倫の慰謝料額に関して影響する要素を取り上げます。不倫慰謝料を請求されている側に関する要素と、請求者側に関する要素に分けてお伝えします。
不倫慰謝料を請求されている側に関する要素
不倫慰謝料を請求されている側に関して、慰謝料額に影響を及ぼす主な要素は以下の通りです。
お伝えする要素を考慮して、相手の請求額に応じるのか、それとも減額を求めるかを決めましょう。
不貞行為の回数・期間
不貞行為の回数が多い、および交際期間が長いほど慰謝料は高くなる傾向です。
職業・資産・収入
原則的に、社会的地位が高い職業に就いている場合は、慰謝料額が高くなる傾向。加えて、こちらの資産や収入が多い場合も同様です。
妊娠の有無
不倫相手が妊娠した、または男性の不倫相手の子供を妊娠した場合、慰謝料額が高くなる傾向です。
請求側に関すること
請求者側に関して、慰謝料額に影響を及ぼす主な要素は以下の通りです。
離婚の有無
慰謝料額に大きな影響を及ぼす事情です。
当該不倫が原因で離婚することになった場合、離婚しない場合と比べて慰謝料額が高くなります。
婚姻期間
婚姻期間が長いほど慰謝料額が高くなる傾向です。
精神的苦痛の程度
不倫相手の配偶者(請求者)がうつ病を患ったり、自殺未遂をおこすなど、精神的苦痛が大きい場合、慰謝料額は高くなる傾向です。
誰に不倫の慰謝料請求をされたのかを確認しよう
不倫慰謝料を誰から請求されているのかを確認しましょう。基本的に次の人物からが多いでしょう。
不倫慰謝料を請求してきたのは、不倫相手の配偶者自身か、またはその配偶者から依頼を受けた弁護士や行政書士の専門家になります。
誰が請求してきたかで対応法なども変わるため押さえましょう。
不倫相手の配偶者自身に慰謝料を請求された
慰謝料を請求してきた相手が不倫相手の配偶者自身であった場合、相手は慰謝料の相場を知らないことが多いです。よって高額な金額を請求してくる傾向があります。
加えて感情的な文面が多く、場合によっては退職要求や過剰な謝罪を求める傾向です。
こちらの行為が原因で、不倫相手の配偶者を傷つけたのは間違いありません。まずは「謝罪」の気持ちをしっかり伝えたうえで、こちらの主張や伝えたり、減額などの交渉をしましょう。
専門家が請求書を作成している場合もある
差出人が不倫相手の配偶者(本人名)であっても、法律的な根拠を示したうえで、それ相応の慰謝料額を請求してくることも。この場合は、実際は行政書士などの専門家が請求書を作成している可能性もあります。
専門家の可能性が高いと感じるなら、各専門家に合わせた対応をとりましょう。
行政書士に慰謝料を請求された
書面の代書人の立場で、行政書士が不倫の慰謝料を請求してくる場合があります。
行政書士は弁護士と違い、本人に代わって直接交渉したり、訴訟で代理人になることはできません。よって調停や裁判にはせず、早期に解決したい考えが基本的にはあります。
行政書士を通してきた請求者は、妥当な金額ならば減額する場合が多いでしょう。
弁護士に慰謝料を請求された
弁護士が代理人として慰謝料請求してくるのは一般的であり、裁判を前提のうえが多いです。請求を放置した場合は、ほぼ裁判を起こされるでしょう。
請求金額が相場的な金額ならば、よほどの減額は難しいと考えるべきです。ただ担当する弁護士次第では減額を認め、示談での解決も珍しくないため、あきらめずに減額交渉しましょう。
相手が交渉のプロ弁護士である以上、一筋縄ではいきません。こちらも対応法などについて、弁護士に相談すべきです。
慰謝料請求者に対して必ず回答をすること
お伝えした通り、不倫慰謝料を請求する内容証明が届いただけでは、請求に応じる義務や、何らかの回答義務はありません。よって「請求を無視しよう。そのうち諦めるだろう」と考える人もなかにはいるでしょう。
お伝えした通り、請求者が弁護士である場合、請求を放置すれば裁判になるのは必須です。
裁判になれば、弁護士に裁判の弁護を依頼する必要があり、無用な費用・時間・労力の負担が強いられます。
無視をすれば慰謝料が増額する要因に
たとえ請求者が弁護士でなくても、請求を放置しても何も解決しません。
請求を無視しても相手は諦めないし、さらに怒らせるだけ。最終的には裁判にされるでしょう。
請求を無視した事実から、裁判官より「後ろめたいから無視したのだろう」と思われる可能性が高まります。結果、悪質性が高いと判断され、慰謝料額が増額する要因となります。
自宅や職場に乗りこまれる場合も
慰謝料請求を無視されたことで、強く憤慨した請求者が予想だにしない行動にでる場合があります。
例えば、請求者が自宅や職場に乗りこみ、周りに不倫をした事実をばらすなどの行為です。
慰謝料請求者とのやりとりの適切な仕方
不倫慰謝料の請求者に対する回答など、適切なやり取りの仕方をお伝えします。
請求者の回答などのやりとりは書面で行うのが鉄則です。やりとりした内容を証拠として残すためです。「言った、聞いていない」などの事態になるのを防げます。
慰謝料の請求権がないと判断した場合
請求者には不倫慰謝料を請求する権利がないため、慰謝料を払う義務がないと判断した場合は、その旨を返答しましょう。
例えば、二人きり食事したのは確かであるが、それ以上は何もないため、慰謝料の支払いはできません。といった内容です。
絶対に避けるべきなのは嘘をつくことです。
例えば、本当は相手が既婚者だとわかっていたのに、知らなかったと嘘をつくのは避けるべき。嘘は容易に見抜かれますし、事態のさらなる悪化は免れません。
慰謝料の請求金額に了承できない場合
慰謝料を支払う意思はあるが、慰謝料の請求金額には了承できないケースは非常に多いです。その場合は、請求金額には応じられない旨を主張しましょう。
例えば次のような内容です。
貴殿が求められている300万円という慰謝料額は、数々の判例から考慮してもあまりにも高額な金額です。100万円で解決させてもらえないでしょうか。
根拠などをもって減額に求めることが大事です。
請求者がこちらに求めているもの
慰謝料を請求する方の多くは、お金に困っているから請求しているのではありません。
基本的に多額の慰謝料を払わすことより、不倫相手からの心からの謝罪を求めています。女性は特にその想いが強いです。
自分のなかで、この不倫問題に対するケジメをつけたいという目的を持っている方も多くいます。特に不倫が発覚後も配偶者と離婚しない場合には、将来の生活に金銭的な不安はないので、その傾向は強いです。
対応を間違えると事態は悪化する
お伝えした通り、請求者がこちらに求めているのは心からの謝罪です。
注意が必要なのは、慰謝料請求された側の態度によっては、その目的が変化することです。例えば、次のような対応をこちらがとれば請求者の目的が変わる可能性が高いでしょう。
謝罪を一切せずに最初から慰謝料の減額を求めれば、後に謝罪をしようが、それは本心からとは思えないのは普通の印象です。請求者とすれば、今さら謝罪されても意味がないと感じ、次のように考えを変えます。
「できる限り多くの慰謝料を不倫相手に払わせてやりたい!」
請求者がこのように目的を変えれば、請求の満額を払う以外の回答は簡単には応じません。もちろん問題解決の時期も遅れるでしょう。
早期の問題解決を目指すなら謝罪する
不倫をしたことが事実であれば、何よりも先に心からの謝罪を相手に表明するべきです。
なかには請求者に有利な証拠を作らせないためにも、「謝罪はしないこと」と伝える専門家もいます。しかし請求者は、既に証拠をしっかり押さえているケースも多くあります。
そもそも不倫をして、相手の配偶者を深く傷つけたことには間違いはありません。よって、まずは謝罪することが、早期に問題解決するための第一歩です。
合意できたのなら示談書を必ず作成
慰謝料に関してやりとりを重ね、話がまとまったのなら示談書を必ず作成しましょう。
示談書とは、次のような事項をまとめた書面です。
- 原因事実と金銭の名目
- 慰謝料額
- 支払い方法
箇条書きの必要事項と、最後に「本件に定める他、何等の債権債務が無いことを確認する」といった清算条項を記載します。
示談書を作成する一番の目的は「事後のトラブルを防止するため」です。
示談書を作成しないリスク
示談書を作成しないことで、後に次のようなトラブルを招く恐れがあります。
「100万円の慰謝料額で了承した覚えがない」
「うつ病を患ったので、さらに30万円払ってください」
「離婚することになり、新たな精神的苦痛を受けたので、追加で100万円を請求します」
解決済と思った問題が再び蒸し返されるほど、苦痛なことはありません。よって、話を話がまとまったなら、示談書を必ず作成しましょう。実際の慰謝料の支払いは示談書を作成した後からです。
※ 示談書の詳細は「不倫(不貞行為)の示談書を解説【慰謝料の書き方や例文を掲載】」で取り上げています。
早期の円満解決を望むなら専門家に依頼する
ここまで不倫の慰謝料請求をされてからの、一連の対応法について解説しました。
お伝えした内容を参考にすれば、自身で解決することも可能ですが、早期の円満解決を望むなら、極力専門家の力を借りましょう。
対応をひとつ間違えれば、相手方のさらなる怒りを買い、取り返しのつかない事態になるからです。また回答の表現をほんの少し誤るだけでも、相手方の要求をすべて認めなければならない事態になる恐れもあります。
このような点は非常に繊細な判断が求められます。加えて、的確に状況を把握する能力、不倫問題に関する法律および判例などの知識も不可欠です。
その場しのぎの知識では解決させるのは難しい
回答の書面を一つ送れば解決する問題ではありません。示談が成立させるまでには、何度も書面のやり取りが必要です。
早期の円満解決や自身の負担をなるべく軽くしたいのなら、やはり弁護士などの専門家のサポートを受けることです。
まとめ
内容証明などで不倫の慰謝料請求された方が、無事に問題解決させるためには、どのように対応すべきかを解説しました。
内容証明が届いたからといって、焦って請求通り応じる必要はありません。請求の内容を十分に検討したうえで、書面にて回答をしましょう。
不貞事実があるのなら、何よりも先に謝罪が必要です。謝罪をせずに、いきなり減額を求めてはいけません。
早期の円満解決を望むなら、弁護士などの専門家のサポートを受けることをオススメします。
不倫問題を無事かつ早期に解決
不倫相手の配偶者から慰謝料請求を受けた場合、専門の弁護士に対応を依頼すべき理由などを徹底解説。