夫や妻の不倫相手に対して慰謝料を請求したが、不倫相手が次のような言いわけをして慰謝料を払わない。
- 積極的に誘ってきた
- 夫婦の婚姻関係は破綻していた
- 相手を既婚者だと知らなかった…など
箇条書きの3つは不倫相手が慰謝料を払わない理由として、特に多い内容です。これらの内容に反論できなければ、不倫相手に慰謝料を払ってもらえません。
ここでは不倫相手が慰謝料を払わない主な理由と適切な対処の仕方について解説。
Contents
払わない理由① 積極的に誘ってきた
不倫相手が慰謝料を払わない理由として多いのは、次のような内容です。
「私が一方的に悪いと決めつけていますが、積極的に誘ってきたのはあなたのご主人です。私は悪くないから慰謝料は払いません。」
不倫相手からこのような反論をされると「しつこく誘った夫が、確かに悪いのかも?」と不安になる方もなかいるでしょう。でも心配は無用です。
不倫相手の「積極的に誘ってきた」という反論は、まったくの的外れであり、性交渉を行った以上は【不貞行為】に該当します。
※ 不貞行為の詳細は「どこから不倫なのかを法律的な観点で解説【不貞行為の定義】」で取り上げています
「積極的に誘ってきた」という反論の対処法
不倫相手の「積極的に誘ってきた」という反論の対処法は、次のような文章を送り返すことです。
貴女と夫との不貞行為が、どのような事情によって生じたかは、貴女が私の夫であるということを知っていながら、夫と不貞行為を行った以上、貴女の不法行為責任を回避する理由とはならない。
赤の太文字の部分は、慰謝料請求の要件の1つである【故意】の部分にあたります。
上記の文章に加えて、次の判例も載せておきます。
最高裁判所 1979年3月30日判決
夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、故意又は過失がある限り、右配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両名の関係が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方の配偶者の被った精神上の苦痛を慰謝すべき義務があるというべきである。
上記判例を要約すると、不倫相手に故意または過失がある限り、慰謝料の支払いを免れない。誘ったか誘われたとか、2人が自然に好きになったとかは、そんなのは関係ない、と伝えています。
払わない理由② 夫婦の婚姻関係は破綻していた
次の場合は、判例上、法的に保護すべき利益がないとされて、不倫当事者に慰謝料を請求できません。
【配偶者と不倫相手の不貞行為が始まった時点で、既に婚姻関係が破たんしていた】
夫婦の関係が冷え切り、お互いに愛情や信頼がないのなら、相手配偶者が別の異性と性交渉しても精神的苦痛はない、とされてます。
多くの不倫相手は、何とかして慰謝料の支払いを回避させようとするものです。ネットなどでこの知識を仕入れて、「あなた方夫婦の婚姻関係は破たんしていた」と反論をしてくるのは珍しくありません。
不倫相手がこの反論をしてくる場面が多いのが、こちらの配偶者が不倫相手に次のような話をしている場合です。
- 妻とは離婚しようと考えている
- 最近は夫と顔を合わせれば喧嘩してばかり
- 家庭内別居状態である
不倫相手の主な反論のなかでは、同情の余地はあるといえるでしょう。しかし口では何とでも言えるわけですから、大人が何の疑いものなく、そのまま信じるのも疑問が大いにあります。
「婚姻関係は破たんしていた」という反論の対処法
こちらの配偶者が言った「離婚を考えている」という言葉だけを信じて、婚姻破たんを主張するのは強引で無理があると言えます。
具体的には、単なる家庭内別居程度では話にならず、最低でも5年ほどの別居期間があって初めて、検討されるようになります。
家庭内別居だと離婚条件をお互いの弁護士を通じて、話し合っている、などの事情がなければ破たん論は通用しません。
以上のことから、不倫相手の「あなた方夫婦の婚姻関係は破たんしていた」の主張に対する反論は以下の内容などが考えられます。
「月1に1度は家族で外食をしている」
「家族で海外旅行を計画している」
「最近、夫婦で性交渉があった」…など
これらの事実を基に反論すれば、不倫相手の「夫婦関係の破たんしている」という主張は崩せます。
払わない理由③ 既婚者だとは知らなかった
お伝えした通り、不貞行為は、民法709条の不法行為に該当し、不倫相手に【故意や過失】がある場合は、慰謝料を請求できます。
故意とは、簡単にいえば「わざと」という意味で、こちらの配偶者を既婚者であると知っている意味です。例えば、夫の不倫相手が夫婦共通の友人だった場合は、当然ながら故意があるのでこの反論はでません。
問題は、配偶者が不倫相手に対して「俺は独身だよ」などと既婚であることを隠して、性交渉をした場合です。
当然、「〇〇さんからは、既婚者だとはまったく聞いていません。」となります。実際に、このような経緯で反論をしてくる不倫相手は一定数います。
「既婚者だとは知らなかった」という反論の対処法
こちらの配偶者が独身と偽って不倫相手と性交渉した場合は、もはや慰謝料請求はできないのでしょうか。
答えは、不倫相手がこちらの配偶者を既婚者だと知らなかったことに【過失】がある場合は、慰謝料は請求できます。
例えば、不倫の当事者が同じ職場だった場合は、この反論が裁判で認められる可能性は低いでしょう。
職場の周りの人間に「〇〇さんって独身って本当なの?」などと確認すれば、簡単にわかる話だからです。確認を怠ったことに過失があるといえます。
一般的な社会人の注意力が欠ける
職場の人間同士の不倫以外であっても、一般的な社会人の注意力をもってすれば、既婚者だと見抜ける場合は過失がありとされます。
例えば、休日はまったく会ってくれない、相手が住む家に行きたいと何度も言っても拒否される場合などです。
相手が30代以上の場合は、既婚者かも? と疑問を一切もたずに不貞行為に及んだなら、過失ありとなる可能性もあります。
以上のことから、不倫相手の「既婚者だと知らなかった」という主張に対する反論は、次のような内容が考えられます。
「夫は、休日は必ず家族といたから、夫が既婚者だと見抜けなかったことに過失がある」
例のような事実を基に反論すれば、不倫相手の「既婚者だと知らなかった」という主張は崩せます。
反論してくる相手は簡単に引き下がらない
ここまで、不倫相手が慰謝料の支払いを払わない主な理由3つと、それに対する対処法をお伝えしました。
不倫相手は慰謝料を払いたくないため、この他にもさまざまな理由をつけて言い逃れをしようとします。
例えば、確かにラブホテルに入ったけど、2人でカラオケをしていただけ、などめちゃくちゃな理由をいう人。
「慰謝料を払わないといけない理由がわからない」などと本気で言ってくるトンデモナイ人とかが実際にいるのです。
簡単には引き下がらず、本当にあれこれ理由をつけて慰謝料を払わないと言ってきます。
支払いを拒否してくる不倫相手に対しては、辛抱強く説き伏せるしかありません。これが一般の方なら、さらにそれが求められます。
伝える人間によって不倫相手の対応も変わる
残念ながら、物事は伝える人間によって、不倫相手の受け止めかたは変わります。
不倫相手に伝える内容がまったく同じでも、一般の方は通らないところ、弁護士ならシブシブながら受けとめます。
一般の方の場合、不倫相手は知ったかぶりしているとか、大げさに言っているだけでしょ? みたいな感じ方をします。つまり、本気で受け止めようとしません。
慰謝料請求を無視されることもよくある
よくある例とすれば、一般の方が不倫相手に対し、法的根拠を載せた慰謝料請求書を送っても完全に無視される。その後に弁護士から慰謝料請求をしたところ何らかの反応がくる。
反応の差は伝える人間によるもの。弁護士だからこそ本気度が伝わり、話し合いの土台に乗るのです。
早期解決を目指すなら弁護士に依頼
問題の早期解決や精神的負担を減らすためには、やはり弁護士など専門家の力を借りるのが無難でしょう。
もし弁護士などに依頼するのが難しい状況なら、何を言われても不倫相手には屈しないという覚悟が求められます。
まとめ
不倫相手が慰謝料を払わない主な理由と、その対処法をお伝えしました。お伝えした対処をすれば、慰謝料を払わないと主張している不倫相手を話し合いの土台に乗せられる可能性が高まります。
それでは最後まで見ていただき、ありがとうございました。
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