配偶者の不倫が発覚して、不倫相手に慰謝料を請求しようと考えていたところ、実はその不倫相手も既婚者であった。
不倫当事者の両者ともが既婚者であるダブル不倫は、通常の不倫の場合と比べて大きく異なる点があり難解です。よって慰謝料請求の難易度は非常に高いでしょう。
ここではダブル不倫における場合の慰謝料請求について解説。本記事を読めばダブル不倫における注意点やポイントがわかります。
Contents
ダブル不倫とは既婚者同士が不貞関係になること
ダブル不倫(W不倫)とは、一般に、既婚者同士が不貞関係になる場合をいいます。
不貞関係の当事者である男女には、それぞれ妻や夫がいる状態。つまり、不貞関係の当事者双方ともが、自分の妻や夫に秘密で交際をしている関係です。
ダブル不倫の被害者は二人
未婚者と既婚者との不倫と比べた場合の大きな違いが次のこと。
【被害者が2人いる】
未婚者と既婚者の不倫の場合は、既婚者の配偶者のみが被害者であるため被害者は1人です。一方ダブル不倫の場合、不倫関係となった当事者には、それぞれ配偶者がいるため、被害者は2人いることになります。
被害者2人にはそれぞれ慰謝料請求権がある
不倫をされた配偶者は、不倫配偶者のみならず不倫相手にも、原則、不倫の慰謝料が請求できます。
※ 不倫相手に対する慰謝料請求の要件の詳細は「不倫相手に慰謝料請求するには?【故意過失など請求要件5つを解説】」で取り上げています。
ダブル不倫の場合は被害者が二人なるため、不倫の慰謝料請求者も2人です。状況説明をわかりやすくするために、次のような事例でお伝えします。
A男とB子は夫婦
C男とD子は夫婦
A男とD子が不倫関係
上記の相関図のようにA男とD子が不倫関係です。A男の妻であるB子は、夫のA男とその不倫相手D子に対して慰謝料を請求する権利があります。
また、D子の夫であるC男も、A男とD子に対して慰謝料を請求する権利があります。
この相互関係から場合によっては、不倫当事者の双方ともが、慰謝料の請求をされる可能性があるのです。
ダブル不倫における慰謝料請求者の選択肢
タブル不倫のケースにおいて、慰謝料請求できる権利が持つ方が、選べる一般的な選択肢は次の通りです。
個別に内容を解説します。
配偶者と離婚し、不倫をした2人に慰謝料請求
不倫をした配偶者と離婚する場合は、不倫配偶者とその不倫相手の両方に対して慰謝料の請求をすればいいだけです。難しい問題はありません。
その理由を先程の事例で説明します。
B子は不倫で離婚原因を作ったA夫に対して、慰謝料を請求は当然できますし、D子にも請求可能です。D子に慰謝料の請求した際には、D子の夫であるC男がA男に請求する可能性は高いです。
しかしB子とすればA男と離婚する以上、A男がC男に慰謝料を請求されようが、別に問題はありません。
離婚をせず、不倫相手にのみ慰謝料請求
配偶者の不倫が発覚したが、次のような理由で離婚をせず、不倫相手に対してのみ慰謝料を請求する場合があります。
- 離婚による子供の影響を考えて
- 配偶者にまだ愛情がある
- 経済的な事情などの理由…など
ダブル不倫の場合には、不倫相手の配偶者も慰謝料請求者の配偶者に慰謝料請求が可能なことを頭に入れておきましょう。
事例でいえば、B子がD子に慰謝料を請求すれば、D子の夫であるC男がA男に請求してくる可能性は高いです。夫婦が離婚しない以上、C男から慰謝料請求のお金は、基本的に夫婦の家庭のお金で支払う流れとなります。
このケースのリスクなどついては、後ほど更に詳しく取り上げます。
離婚をせず、不倫をした2人に慰謝料請求
離婚をせずに、不倫した配偶者とその不倫相手の両者に対して慰謝料請求をする場合も考えられます。
しかし、夫婦別財産制をとっている夫婦を除くと、不倫当事者2人ともに慰謝料を請求する方は現実的ではありません。その理由を先程の事例で説明します。
A男とB子が婚姻関係を続ける以上、B子からA男に慰謝料を請求しても、夫婦の財産が増減するわけではありません。
B子としては、A男の不倫相手であるD子に対してのみ慰謝料を請求したいと考えるのが普通だからです。
離婚せずに慰謝料請求するリスクの詳細
ここからは離婚をせずに不倫相手に対して、慰謝料請求する場合のリスクや注意点などを深掘りして取り上げます。
お伝えした通り、ダブル不倫の場合には不倫相手の配偶者も、慰謝料請求者の配偶者に対して慰謝料請求が可能です。これを踏まえて、まずはもっとも避けたい場合を確認しましょう。
不倫相手の夫婦が離婚となった場合
自分たち夫婦は離婚をせずに、先に不倫相手に対して慰謝料を請求したとします。ところが不倫相手の配偶者も応戦して、こちらの配偶者に慰謝料を請求。
事例だと、B子が夫A男の不倫相手であるD子に慰謝料を請求したところ、D子の夫であるC男がA男に慰謝料請求される流れです。
ここで問題となるのが、C男D子夫婦は離婚するとなった場合です。不倫の慰謝料金額は、不倫発覚後も婚姻関係を続ける場合と比べ、離婚に至るほうが高額になります。
実際に離婚となった場合、D子の夫C男からA男に対し、B子の請求金額よりも高額な慰謝料を請求される可能性が高いでしょう。
最悪な結末になることも
C男から慰謝料請求されるのは、慰謝料請求をしたB子の方はなく、A男の方です。
しかし、A男がC男に支払う慰謝料は、実質的には家庭のお金(A男B子夫婦の財産)からです。よってD子からの慰謝料を受けとっても当然マイナスです。これではB子のD子に対する慰謝料請求は大失敗と言わざるを得ません。
慰謝料請求が大失敗に終わったことで、夫婦関係がより悪くなり、離婚の結末を迎えることもあります。
この事態になる可能性を完全に否定できない以上、慰謝料請求先の夫婦が離婚するとわかっている場合は請求をやめましょう。離婚するかわからない場合は、しばらく様子を見ることが必要です。
慰謝料請求先の夫婦が離婚しない場合のポイント
請求先の夫婦側が離婚しないとわかっていても、次のような事情が“ない”場合は、慰謝料請求は控えるべきでしょう。
- 不倫相手の夫婦の関係が、不倫開始時点で破綻していた
- 請求される側の配偶者の方が不倫に積極的だった
- 請求者側の夫婦の方が不倫相手側の夫婦より、婚姻期間が長い
これらの事情がなければ、慰謝料を請求しても、こちらが請求した金額と同額を請求してくる可能性が高いといえます。
状況によっては、こちら側が不利になる可能性も十分あります。例えば次のような場合です。
不倫相手は不倫関係の解消を望んでいたが、こちらの配偶者がそれを拒絶していたなど、こちら側の方が不倫に積極的だった。
請求側の夫婦より、相手側の夫婦の方が婚姻期間は長かった。
慰謝料を請求される側の夫婦の方が有利な事情がある場合は、こちらの方がより多くの慰謝料を支払う事態となります。よって慰謝料を請求するか否かの判断は、こちらや相手方の夫婦の状況をしっかり見極めた上で行うことです。
ダブル不倫で慰謝料請求する上でのポイント
ここまでダブル不倫の場合において、夫婦が離婚せず不倫相手に慰謝料を請求する場合の特殊性などをお伝えしました。
ダブル不倫の特殊性を要約すると次の通りです。
不倫相手に慰謝料を請求した際、不倫相手の配偶者から請求者の配偶者に慰謝料を請求される可能性が高いこと。
このリスクを可能な限り、減らす方法があります。
リスクを減らす方法を使う大前提として、慰謝料の請求先である不倫相手の配偶者に不倫の事実を知られていないこと。不倫の事実を知られるからこそ、こちらにも請求されるため、不倫の事実を知られなければいいのです。
事例で見れば、B子とC男の二人が被害者。よってC男に不倫の事実が知られないように、B子からD子に対して慰謝料を請求します。
内容証明郵便の送付は控える
不倫の慰謝料請求する際は、内容証明郵便で書面を送付するのが一般的ですが、ダブル不倫の場合は以下の理由から控えるべきです。
内容証明を控えるべき理由
重圧感がある特殊な郵便物である内容証明郵便が、一般家庭に届くことは基本的にありません。もし内容証明郵便の受けとりが、不倫相手の配偶者だったなら、すぐに開封する可能性が高いでしょう。
開封すれば、不倫の事実を知られる必然であるため、内容証明郵便を送ることはリスクが高いといえます。
他には職場に送付することも考えられます。
郵便物が内容証明郵便の形式であるため、会社によっては上司立ち合いの元で開封させられる場合もあります。このことで不倫の事実が会社の人間に知られ、そこから配偶者に知られる恐れがあります。
※ 内容証明郵便の詳細は「不倫問題で内容証明郵便を使うメリットを解説【請求書の例文あり】」で取り上げています。
また多くの会社では就業規則で不倫を禁じているため、規則に反した不倫相手が退職させられる可能性もゼロではありません。
不倫相手の配偶者に不倫事実を知られない方法
不倫相手に慰謝料請求をするにおいて、不倫相手の配偶者に不倫事実を知られない方法をお伝えします。
次の2つのいずれかの郵便方法で書面を送付することです。
- 本人限定郵便
- 郵便局留め郵便
個別に内容を解説します。
本人限定郵便とは
本人限定郵便とは、本人が運転免許証などの身分証を提示すれば、郵便物を受けとりできる郵便サービスです
本人限定郵便なら、書面の内容を第三者には見られません。なお受けとり時間の指定も可能です。
郵便局留め郵便とは
郵便局留め郵便とは、本人が郵便局の窓口で身分証明書を提示すれば、郵便物を受け取りできる郵便サービスです。
郵便局留め郵便を利用する際には、差出人が不倫相手に電話などで郵便物を〇〇郵便局に送付したとの連絡が必要。
本人限定郵便との違いは、書面送付の事実を相手に知らせなければ、郵便が届いた事実さえ伝わらないことです。
この2つの方法だと、不倫相手の配偶者に不倫事実を知られる可能性は、不倫相手が告白する場合を除けば極めて低いでしょう。
慰謝料請求額は低いほうが安全
確かに本人限定郵便や郵便局留め郵便は、不利相手の配偶者に知られる可能性は低いです。
しかし請求側が高い慰謝料を請求したり、土下座をして謝れなど無茶な要求をした場合は、知られる可能性は一気に高まります。自分の許容範囲外の要求をされると、不倫の事実を告白し、配偶者に助けを求めるからです。
一方、ある程度の要求なら、不倫相手は自身の配偶者に不倫の事実を知られたくないため応じるでしょう。よって、請求する慰謝料額は低いほど安全ですし、無茶な要求も一切しないことです。
自身の配偶者と不倫相手との関係解消や、不倫の再発防止を一番の目的とするならば、次のことを求めましょう。
【慰謝料請求は保留する代わりに、不倫関係の解消の確約などの誓約書を差し出させること。】
※ 不倫の誓約書の詳細は「【不倫をやめさせる方法】誓約書を作成する際のポイントなどを解説」で取り上げています。
ダブル不倫の問題は複雑なため専門家に相談
不倫問題は対応を誤ると、複雑な紛争状態になり裁判に発展する恐れがあります。ましてやダブル不倫は、通常の不倫と違い被害者が2人となるのため、難易度はさらに上がります。
不倫問題はどうしても感情的になるため、冷静な判断ができず間違った言動をしがちです。結果、問題が複雑化して解決が遅れたり、取り返しのつかない事態を招く恐れがあるのです。
慰謝料を請求するにせよ、請求されたにせよ、自分だけで対応するのではなく、弁護士などの専門家に相談するのがもっとも安心です。専門家に相談すれば、相手方とのやり取りがスムーズに進みますし、問題が悪化する事態を防げます。
まとめ
ダブル不倫における場合の慰謝料請求について解説しました。お伝えした通り、ダブル不倫で慰謝料を請求する場合、あらゆることを考慮する必要があります。
置かれている状況を正しく把握せず、間違った判断のもとで慰謝料請求すれば、こちらの方が多くの慰謝料を払う事態を招きます。実際に慰謝料請求をする場合は、弁護士などの専門家に相談することを強くオススメします。