夫の不倫相手に対して、書面で慰謝料請求のやりとりをしたが、不倫相手はまったく応じようとしない。
だからといって、このまま泣き寝入りするのは絶対に嫌だ! しかし裁判となると多くの時間や費用がかかるため、簡単にはできない…
示談での解決が見込めない場合、不倫慰謝料請求調停を行うことで不倫相手に慰謝料の支払いに応じさせることが可能です。
ここでは不倫慰謝料請求調停について解説。本記事を読めば、不倫慰謝料請求調停のメリット・デメリットや申し立て方法、調停の制度や流れなど網羅的な情報がわかります。
不倫調停は当事者による話し合いの場
一般の方は「調停」と「裁判」は同じようなイメージがあるかもですが、まったく別ものと考えてください。
確かに調停は、簡易裁判所または家庭裁判所などで行いますが、裁判官が白黒はっきりつける判決を下すものではありません。
【調停委員】という第三者が、当事者の間に入って行われる話し合いです。
調停委員は、当事者の双方の言い分を聴いたうえで、不倫問題解決のためにアドバイスをしたり、調整案の提示を行います。これらには強制力はありませんので、あくまで当事者間の合意が必要です。
示談の解決が見込めない場合に申し立てる
不倫相手に対しての慰謝料請求であっても、まずは当事者間同士の話し合いで解決を試みるのが基本です。
不倫問題の解決に向けて、書面やメールなどのやりとりを重ねても、相手が慰謝料の支払いに応じない場合があります。なかには慰謝料の請求自体を無視して、話し合いにすら応じない人も稀ではありません。
このような状況になれば、もはや示談での解決は困難となります。次に解決を目指す手段のひとつとして、簡易裁判所などで行う不倫調停があるのです。
最初から裁判を起こすことも可能
自分の配偶者に対しての慰謝料請求の場合、調停を経ずに最初から裁判を起こすことはできません。
夫婦間の問題は、法律を適用して白黒はっきりつけるのは適当ではなく、まずは夫婦間で話し合いをすべきだと考えているからです。調停前置主義といわれます。
一方、不倫相手などの第三者に対しての慰謝料請求の場合は、調停を経ないで最初から裁判を起こすことも可能です。
※ 不倫裁判の詳細は「不倫裁判のメリット・デメリットや流れを解説【勝訴判決を得られる証拠】」で取り上げています。
最初から不倫調停をするのは不効率
最初から不倫調停をするのはオススメできません。問題解決に至ったとしても、1回の調停でおわることは少なく、複数回する必要があるからです。
調停が行われるペースは1~2ヵ月に1度のペースなので、早期の問題解決は望めません。
不倫調停のメリット・デメリットとは
不倫調停を行うメリットとデメリットをお伝えします。
不倫調停を行う主なメリット
不倫調停の申し立てをすると、裁判所から不倫相手に呼出状などの書類が送られてきます。不倫相手がその書類を受けとることで「相手はいよいよ本気になってきた」と感じます。
請求者の覚悟を不倫相手に見せつけることで、不倫問題の解決に向けての話し合いに、きっちり向き合いさせられます。
不倫相手の態度が軟化する
当事者間のやりとりだと、感情的にどうしてもなりがちです。
「私が一方的に悪いと決めつけていますが、積極的に誘ってきたのはあなたのご主人。私は悪くないから慰謝料を払いません。」
このような考えをもつ不倫相手は多くいます。
不倫相手のこの主張に対して、請求者が「それは慰謝料を払わない理由にならない」と反論しても、聞く耳をもちません。
請求者と同様に、慰謝料を払わない理由にならないことを伝えると、不倫相手は次のように思う可能性があります。
「調停委員が言うのだから、私は慰謝料を支払う責任を免れられないのか…」
調停委員が間に入ることで、頑なだった不倫相手の態度が軟化し、慰謝料の支払いに応じるなど、問題解決の進展が期待できます。
不倫調停のデメリット
お伝えした通り、不倫調停は早期解決を望めません。
申し立てのときから初回の調停が開かれるまで、1~2ヵ月かかります。2回目以降も同じペースであり、何らかの結果がでるまで複数回する必要があるため、時間がかかるのです。
解決までに多くの時間を要すことは避けなければなりません。不倫された側の精神的負担が大きいからです。
調停をしたからといって、問題解決に至るかは分かりません。お互いの同意が必要だからです。そもそも不倫相手が調停にこない可能性もあり、そうなれば調停は不成立で終了します。
不倫調停の申し立て方法
不倫相手に対する慰謝料請求調停は、基本的に「簡易裁判所」に申立てを行います。
申し立ては、どこの簡易裁判所でもいいのではなく、不倫相手の住所地を管轄する簡易裁判所となります。
例えば、請求者が東京に住んでいても、不倫相手が埼玉に住んでいるなら、埼玉の簡易裁判所に対して申し立てが必要です。ただし、不倫相手が東京で調停をすることに応じれば、東京の簡易裁判所でできます。
不倫調停の申し立てに必要なもの
不倫調停の申し立てに必要なものは次の通りです。
- 申立書
- 収入印紙
- 郵便切手
個別に内容をお伝えします。
申立書
申立書は簡易裁判所に記入例と一緒に用意されており、無料で入手できます。記入方法などで不明な点があれば、相談の受付場所があり、そこで質問できます。
収入印紙
収入印紙は、不倫調停の制度を利用するにあたり、必要な手数料として納付が必要です。(手数料早見表より)
申し立ての手数料は、請求する慰謝料の金額によって変わります。具体的には次の通りです
各請求金額の手数料例(一部)
請求額が50万円の場合⇒2,500円
請求額が100万円の場合⇒5,000円
請求額が200万円の場合⇒7,500円
請求額が300万円の場合⇒10,000円
詳しくは裁判所にお問い合わせください。
郵便切手
郵便切手は、当事者に呼出状などの書類を送付するためなどに必要です。
郵便切手の金額は、ケースによって異なるので、具体的には申立書を提出する簡易裁判所に聞くことになります。目安的には2,000円程度でしょう。
不倫調停の流れ
申立書を提出後、簡易裁判所から「呼出状」が当事者双方に届きます。呼出状とは初回の調停期日などに関する案内書です。
調停期日までに今までの時系列をまとめたものや、自身の考えを書面などにまとめておきます。不倫を裏付ける証拠も用意しておきましょう。
※ 不倫の証拠の詳細は「不倫慰謝料とは|目安はどれくらい? 【離婚しない場合も含め解説】」で取り上げています。
調停室でのやりとり
実際の調停は、簡易裁判所内の調停室で行われます。
調停の場は、関係者以外は立ち入り禁止の【非公開】であるため、第三者に情報が漏れることはありません。
調停委員の役目
調停室には、主に2名の調停委員がいて、その者が当事者の双方話を聞きます。そのうえで、次のような内容をアドバイスします。
慰謝料の支払いの必要性の有無をはじめ、判例などから、慰謝料の請求額の妥当性などです。ときには、双方の意見を調整した解決案なども提示され、お互いが合意できるように導きます。
多くは半年以内に結論がでている
話し合いを何度か重ね、お互いが合意できれば、問題解決の証である【調停調書】を作成し、調停は終了します。
不倫調停を申し立てから、調停での結論が出るまでの期間は、ほとんどが半年以内ですので、訴訟と比べれば早期の解決が望めます。
弁護士に依頼せずとも不倫調停はできる
裁判所の制度を利用するには、弁護士が必要だと考える方は多いでしょう。
弁護士にサポートを依頼すると、費用が高額になる場合が多くあります。それがネックで、不倫相手への慰謝料請求を諦め、泣き寝入りし、大変つらく悔しい思いをする方もいます。
確かに、裁判所という場所で行うのには変わりありませんが、調停と訴訟では大きく違います。
専門的な法律知識は不要
お伝えした通り、調停は調停委員を間に挟んだ話し合いにすぎないため、専門的な法律知識がなくても進められます。
申立書も記載例を参考にすれば、問題なく記入できますし、仮にわからなくても、簡易裁判所で教えてもらえます。
以上のように、不倫調停は自分だけで行うことは十分できるため、少ない費用で利用できます。
示談交渉では解決できなかった前提で、費用面などがネックで裁判に踏みだせない方は、不倫調停を行うことを検討しましょう。
まとめ
不倫慰謝料請求調停について取り上げました。
不倫相手へ示談での慰謝料請求が決裂した場合、裁判をしたくても費用などの問題でできない方もいるでしょう。
不倫調停は、自分だけで十分できますし、費用も裁判と比べれば、かなり安く済みますので、申し立てを検討されるといいでしょう。
慰謝料請求を成功させる鉄則
夫や妻の不倫相手に対する慰謝料請求を成功させるための鉄則を取り上げています。
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