「夫や妻の不倫相手が許せないから慰謝料請求をしたい!」
そう思ったなら最初に確認をすべきことは、自分にその権利があるかどうかです。不倫相手の慰謝料請求できる要件は不倫した配偶者よりも多いです。
ここでは不倫相手に慰謝料を請求できる権利を持つための5つの要件を詳しく解説。本記事を見ることで、自身が不倫相手に慰謝料を請求できる権利があるのかどうかがわかります。
Contents
不倫相手に慰謝料を請求できる根拠
不倫相手に慰謝料を請求できる根拠を最初に取り上げます。その前提知識を持った上で、5つの条件をお伝えした方がわかり易いからです。
不倫の慰謝料とは、不法行為により被った精神的損害を償うための金銭です。根拠となる条文が次の通り。
故意(こい)又は過失(かしつ)によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。(民法709条)
「他人の権利又は法律上保護される利益」を侵害される部分が不法行為に当たります。不倫の場合は何に当てはまるかと言えば、【平穏な婚姻生活を送る権利を侵害されたこと】です。
不倫発覚後の生活
配偶者の不倫が発覚すれば平穏だった日常が一変します。不倫をされた側の配偶者は次のような負の感情が襲います。
- 怒り
- 悲しみ
- 自己否定
- 無気力感…など
精神状態はボロボロです。まさに平穏な婚姻生活を送る権利を侵害されていると言えるでしょう。
仮に離婚をしなかったとしても、夫婦関係は間違いなくヒビが入るため、以前のような平穏な婚姻生活を過ごすのは難しいです。よって、権利を侵害されていることになります。
請求要件① 性交渉があること
それでは不倫相手に慰謝料を請求できる条件をお伝えします。
まずは1つ目で、こちらの配偶者とその不倫相手の間に【性交渉があること】です。
この要件を知ると「キスしたとか、二人きりでデートした場合は、慰謝料請求できないの?」という疑問を抱く方がはいるでしょう。残念ながら裁判所は、最後の一線を越えた行為を原則的に不法としています。
同意の上で性交をした
不倫相手が【自由な意思をもって】こちらの配偶者と性交を持ったことも必要です。自由な意志とは、簡単に言えば自分の意思でという意味で、もっと言えば同意の上という意味。
もし配偶者が相手に対してレイプした、相手の弱みにつけ込んで性交を強要した場合は、当然相手には慰謝料請求できません。相手は被害者だからです。
請求要件② 故意または過失があること
慰謝料請求できる要件の2つ目は、不倫相手に【故意】や【過失】があることです。
お伝えした通り、「不法行為とは“故意”又は“過失”によって、他人の権利又は法律上保護される利益を侵害すること」でした。では「故意や過失」とは何か?について解説します。
故意=既婚者だと知っていた
故意とは、簡単にいえば「わざと」という意味合い。
不倫の場合において故意とは、相手を既婚者だと知っていながら性交渉をしたことです。
ときには不倫相手が「あなたのご主人が既婚者だとは知りませんでした」などと反論してくることも。この場合は、不倫相手が夫を既婚者だと知っていたことを証明する必要があります。
証明できるものは、例えば次のような2人のLINEのやり取りです。
「最近会う回数多いけど、奥さんに怪しまれていない?」「来週の土曜日、嫁はママ友同士で旅行に行っているから、そっちの家に泊まりに行っていい?」
このようなやりとりを証拠として見せつけることで、不倫相手の主張が嘘だと裏付けできます。
過失=落ち度
次に過失ですが、簡単に言えば「責められるべき落ち度がある」という意味です。
つまり、不倫相手がこちらの配偶者を既婚者だと知らないとしても、少し注意すればわかる場合は過失がある状態となります。
過失があるとは次のような場合が挙げられます。
- 交際期間も長いのに、相手の家に行きたいと言ってもいつも断られる。
- 年齢的に結婚している可能性を確認すべきなのに、それをまったく行っていない。
- 夜は絶対に電話に出てくれない。
- 同じ職場で同じフロアで働いている。
- 相手の指に結婚指輪がはめられている。…など
これらは過失があると認められるため、不倫相手に慰謝料を請求できます。
過失がないと言える場合
過失がない場合とは、独身率が高い20代半ばの男性がある女性に独身だと偽る。その上に嘘だとバレないように、その男性の友達が住むワンルームマンションを借りて、その部屋に連れこみ1度だけ性交渉をした。
請求要件③ 婚姻関係が破たんしていないこと
慰謝料請求できる要件の3つ目は、【婚姻関係(夫婦関係)が破たんしていない】ことです。
不倫相手に慰謝料を請求できる根拠が、不倫が原因で「平穏な婚姻生活を送る権利を侵害された」ためだとお伝えしました。
でも不倫が始まる前に、夫婦の仲が冷え切っていて、双方がお互いにまったく愛情も興味もない状態だとどうでしょう。まさに夫婦の仲が破たんしている状態といえます。
たとえ配偶者が他の異性と性交関係を持ったとしても、精神的な苦痛なく、以前と何ら生活は変わりません。よって法律上保護される利益はないとされ、不倫相手に慰謝料を請求できません。
離婚後に元配偶者が誰と性交渉を持とうが、知ったことではない、という感じと同じです。
婚姻関係の破綻は簡単には認められない
裁判所は「婚姻関係(夫婦関係)が破たんしている」という判断を簡単にはしません。
単に不仲であるとか、家庭内別居が数カ月続いている程度では、認められる可能性は限りなく低いでしょう。相手配偶者が婚姻継続を望む場合は、こんな程度で簡単に離婚を認められては、たまったものじゃないので当然です。
夫婦仲が修復不可能の破たん状態と認められるには、双方が離婚を求めて調停中、長期の別居が続いているなどの状況が必要です。
請求要件④ 不倫相手の情報がわかること
不倫相手に対して慰謝料を請求するには、不倫相手の名前や住所などの情報を知っておく必要があります。不倫相手に慰謝料請求する場合、書面を不倫相手に送付して通知するのが一般的だからです。
不倫相手の名前や住所を知るには、基本的に不倫をした配偶者から問いただす方法が考えられます。
配偶者が教えない、または知らない場合は、弁護士を通じて、または探偵を利用すれば知ることが可能です。
※ 不倫相手の身元が不明な場合の対処法は「不倫相手の名前や住所を教えない場合の対処法【携帯番号でわかる?】」で取り上げています。
請求要件⑤ 証拠があること(絶対ではない)
慰謝料請求できる最後の要件は、【証拠があること】です。
しかし証拠があることは絶対要件ではありません。
裁判の場で不倫相手に慰謝料を求めるならば、配偶者と不倫相手に性交渉があったとする客観的な証拠が必須。それがないと勝てる見込みはゼロに近いため、絶対条件となります。
一方、裁判以外の段階では、証拠がなくても慰謝料を請求するのは可能ですし、それで不倫相手が応じる可能性もゼロではありません。
しかし、まったく証拠がない状態で慰謝料を請求するのはリスクがあります。特に不倫しているかも? という状態ではすべきではないです。
本当に2人に性交渉がない可能性もあること、または不倫相手に証拠もないくせに鎌をかけていると思われる可能性があるからです。この場合、慰謝料を請求した相手から恐喝などで刑事告訴などをされる可能性も否定できません。
以上のことから、原則的に証拠を持った上で、不倫相手に慰謝料を請求するべきです。
※ 不倫の証拠の詳細については「【不貞行為の証拠集め】証拠になるものを解説|不倫の自白は立証可能?」で取りあげています。
まとめ
不倫相手に慰謝料を請求できる権利を持つための5つの要件を取り上げました。最後に箇条書きで要件を確認しましょう。
- 2人の間に性交があること
- 不倫相手に故意または過失があること
- 夫婦仲が破たんしていないこと
- 不倫相手の情報がわかること
- 証拠があること
不倫相手に慰謝料請求できるか否かの判断が難しいケースもあるでしょう。その場合は、男女トラブルの専門家に相談するのが一番です。
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