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親権の適用の基本的な期限
親権は大きく分けると、財産管理権と身上監護権という2種類の権利で構成されています。その親権が適用されるのはいつまでかと言うと、基本的には子供が未成年でなくなる時までです。民放第818条第1項に、「成年に達しない子は、父母の親権に服する。」と規定されているからです。つまり、現時点の法律の下では、子供が20歳になると親権は消滅します。
ただし、子供が成人して親権が適用されなくなったからと言っても、親と子供の関係が全て消滅するわけではありません。確かに、財産管理権と身上監護権という形での権利を親が行使することはできなくなります。しかし、親子の間の相続関係や扶養義務といった法律関係は、子供が成人した後にも存在します。
そういった法律関係に関しては、相続放棄などの手段で一部分を断つことは可能です。ただし、親子関係そのものを完全に断ち切ることはできません。親権が適用されなくなった後も、子供と親の特別な関係は、どちらかが生きている限り消え去ることはないのです。
親権の適用の期限にはいくつかの例外がある
子供が未成年の間という親権の適用の期限には、いくつかの例外があります。その例外の代表的なものは結婚です。民放の第753条には、「未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。」と規定されています。したがって、20歳未満の年齢であっても、その子供が結婚した時に親権は消滅することになります。その結婚によって一度消滅した親権は、子どもが未成年の間に離婚したとしても復活することはありません。
また、子供が養子となった場合には養親が親権者となって、それ以前に実の両親が持っていた親権は消滅します。
民放第818条第2項に、「子が養子であるときは、養親の親権に服する。」とあるからです。そのことは普通養子縁組の場合でも、特別養子縁組の場合でも同様だと解釈するのが一般的です。子供が未成年の間に離縁によって養親子関係が解消された時には、実の両親が再び親権を持つことになります。この場合には結婚とは違い、成年とみなされたわけではないからです。
片方の親だけが親権を失うこともある
婚姻が成立している間は、夫婦が共同してその親権を行使するのが原則とされています。ただし、親権を夫婦が共同して行使するという原則にも例外があります。その例外が生じることで、片方の親だけが親権を失います。その例外の一つが、父母のどちらかが法律上、もしくは事実上親権を行使できない場合です。
法律上親権を行使できない場合とは、例えば虐待などが原因で親権停止の審判を受けたり、精神上の問題によって成年後見や保佐開始の審判を受けたりした場合のことを言います。また、事実上親権を行使できない場合とは、例えば行方不明になったり、刑務所に服役することになったりした場合のことを指します。
もちろん、どちらかの親が亡くなった場合にもその親権は消滅します。そのような場合には、もう一方の親が単独親権を持つことになります。このような場合に親権が適用されるのはいつまでかと言うと、その親が親権を行使できないことが確定するまでだと考えられます。
親権は離婚の時に失う場合もある
親権は子供が未成年の間は、基本的にすべての親が有しているものです。しかし、夫婦の両方ともに問題がない家庭では、その存在が話題となることは多くないでしょう。
親権の存在は、家庭の中でトラブルが生じた場合に意識される場合が多いのです。特に、離婚する際にどちらが持つかという形でよく問題となります。未成年の子供がいる夫婦が離婚する時には、父親と母親のどちらが親権者となるかを決めなければならないからです。離婚届には「夫が親権を行なう子」と「妻が親権を行なう子」という欄があります。未成年の子供がいる場合にはどちらかにその氏名を記入しなければ受理してもらえません。
また、離婚の際には基本的には父親か母親のどちらかが財産管理権と身上監護権の両方を持つことになります。しかし、事情があればその二つの権利を分離することもあります。親権者となった父親が財産管理権だけを、母親が身上監護権だけを持つといったようにです。両親の資質や生活状況によっては、子供の健やかな成育の役に立つ可能性があるからです。
例えば、親権者となった親に子供の面倒を見られない事情がある場合などがそれに当てはまります。また、そのように子どもに関する権利を分け合うことにより、子供との関わりを両親が保ちやすくなるというメリットもあります。ただし、この場合にも親権者にならなかった方の親が、離婚の時点で子供の親権を失うことに変わりはありません。
親権者とならなかった親の親権はいつまで有効?
離婚の際に親権者を決める方法にはいくつかのものがあります。まずは、夫婦の間での話し合いによって決定するのが基本的なやり方です。そのような協議離婚の場合に、親権者とならなかった親に親権が適用されるのは、離婚届が受理される時までです。なぜなら、協議離婚が成立するのは離婚届を提出した時点だからです。
話し合いではお互いの主張に折り合いが付かないような場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。中立な調停委員が間に入った話し合いの手続きの中で、親権者を決めるのです。
それでもまだ親権者が決まらない場合には、通常は離婚訴訟が申し立てられます。訴訟手続きが始まると、裁判所の判断によって親権者が決定されます。そのように調停もしくは裁判により一方の親権が適用されなくなるのは、離婚調停が成立した時点か離婚訴訟の判決が出た時点です。親権が適用されなくなる時点が協議離婚の場合と異なるのは、役所に離婚が成立したことを報告する手続きに過ぎないからです。それらの場合に離婚届のような書類を役所に提出するのは、離婚成立の条件ではありません。
親権が適用されなくなった後の親の義務
夫婦の離婚が成立して自分が親権者とならなかった場合にも、子供と親という関係は一生続いて行きます。
したがって、親と子供のどちらかが亡くなった場合には相続が開始します。
また、生活状況によってはお互いに扶養義務が生じます。さらに、離婚により親権が適用されなくなった場合でも、子供が未成年の間にはより特別な関係が存在しています。そのような関係の代表的な例と言えるのが、一緒に生活を送っていなくても、親権を持っている元配偶者に対して子供の養育費を支払う義務があることです。この場合に負担するのは生活保持義務という重い義務となります。そのため、基本的には自分の生活水準と同じ程度の生活を保てるような金額を支払う必要があります。
親権が適用されなくなった後の親の権利
離婚した後に、親権者でなくても行使できる権利も存在しています。例えば監護権を持っている場合であれば、子供と一緒に生活したり、子どもに対して教育を行ったりすることができます。監護権を持っていない場合でも、面会交流権という権利があります。その権利を行使することで、子供と会うことが可能となります。なぜなら、離婚して親権を失っても、親子であるという事実はなくならないからです。時折会って交流を持つことは、親と子供の双方にとって好ましいことだと考えられているのです。
おわりに
ここまでに見てきたように、基本的には子供が成人するまではその親に親権が適用されます。ただし、そこには色々な例外も存在しており、子供が成人する前でも親権を失うことがあります。例えば子供が結婚したり、離婚した時に親権者になれなかったりといったような場合です。しかし、親権がなくなっても親と子供の関係は消滅しません。親と子供の間には、様々な権利や義務がずっと存在し続けるのです。